「通訳」というと、どんなイメージがあるでしょうか。目にしたことがあるのは、テレビなどで雲の上のハリウッドスターやスポーツ選手のインタビューを訳す姿や、メディアで取り上げられる放送通訳、国際会議通訳など、第一線で活躍するエリート的な人くらいで、自分とはあまり縁がない人、という感覚が一般的かも知れませんね。

実際のところ、通訳の仕事は多岐にわたり、色んな方がいます。利用者が通訳者に直接依頼ができる通訳サーチでは、もっと通訳という職業の人を身近に感じ、利用を考えていただける機会が増えていくよう、登録通訳者の方にお話を聞き、掲載していきます。

第1回目は、シンガポール在住でフリーランスとして活躍される余田愛さん。一見、外国語さえ話せれば簡単にできると思われがちな通訳という仕事の、実際には見えないところで積み重ねられている必死の努力についてお話ししてくださいます。

 



いつも走ってますね、と言われていました

ー 責任感をもって仕事をこなすために寸暇を惜しんで予習に励む日々

 

 

【 略 歴 】

お名前:余田愛さん

通訳言語:英語、日本語

在住地:シンガポール

出張可能エリア:現在はシンガポールのみだが、自主隔離なく渡航可能であれば基本的にどこでも出張可能。

対応通訳形態:ウィスパリング通訳、同時通訳、逐次通訳、司法通訳、

福岡出身で、シンガポール在住歴は約20年。現地の日系企業にて通訳を含む勤務経験を得たのち、現在はフリーランス通訳者として、会議通訳から、ビジネス関連、政府機関訪問、視察、裁判、国際見本市、そして病院や銀行同行などまで、多方面にてご活躍中。

詳細は通訳サーチプロフィールにて。

 

「行動あるのみ」の結果たどり着いた通訳の仕事

Q:通訳の仕事をするようになったきっかけを教えてください。

元々英語を学ぶことに興味があったので、大学を卒業後、アルバイトでお金を貯め、イギリスに語学留学に行きました。帰国後は地元の九州に戻り、仕事を探しましたが、語学を生かせる就職先はなく、英語とは関係のない職場で働く日々を過ごすことに。

その後、もっと大きな街で働くことにチャレンジしてみたいと思うようになり、ちょうどその頃、香港やシンガポールで働く現地採用女性が増え出した時期だったので、せっかくなら海外に行ってみようと、英語の使えるシンガポールにターゲットを絞り、職を求めました。

そうは行っても当時はまだまだ海外に関する情報が少なく、転職活動は結構大変でしたが、仕事を得ることに成功し、渡星して今に至ります。

 



 

シンガポールの職場で、正社員としてこなすメインの事務系の業務に付随して通訳を頼まれる機会が多かったのに加え、子育てに専念していた際、現地で通訳エージェントを経営している知人に声をかけてもらい、アルバイト的に通訳の業務を請け負うこともありました。最初はそんな風に通訳という仕事をするようになったのです。

フリーランスになる前に勤務していた会社では、多岐に渡る業務に携わっており、色々な公的機関や金融機関などを訪問したりと、幅広い経験を積み、通訳としての汎用性が広がりました。

そのような流れのなか、通訳のスキルをさらに向上させたいという気持ちが生まれ、通訳スクールのオンライン講座で訓練を受けるなど本格的にスキルを磨いて、フリーランスへと転身しました。

 

緻密な準備のため遊ぶ時間もない日々

Q:通訳として、どんなお仕事をされているのですか?

現在は、オンラインの仕事がほとんどで、web会議やイベント、裁判所などで通訳をすることが多いです。新型コロナ禍前は、企業や官公庁の現地視察もよくやっていました。フリーランスになった当初は、いただいた依頼はとにかく受ける、というのをポリシーにして、エージェントからくるものは何でもやりました。

日本では専門的分野を持つ人が多いのではないかと思いますが、海外在住のフリーランス通訳は、案件の数と現地の人材に限りがあるため、本当に色々な業界のお仕事をいただきます。

そうなると、お仕事をいただく毎に、その業界の専門用語を事前に勉強しなくてはいけません。資料を事前にもらい、必ず目を通して、分からないところを洗い出し、調べて理解するようにしています。日本語でも聞いたことのないような用語も覚えなくてはいけないことが少なくないんですよ。

 



 

Q:その他に、通訳をする上で努力していることはありますか?

東南アジアのビジネスのハブ都市であるシンガポールにはたくさんの国籍の人が集まります。英語とひとくちにいっても、それぞれに訛りがあり、オーストラリアや南米など、普段聞き慣れていない訛りを持つ人がいると聞き取りが本当に大変なため、事前にスピーカーとなる方のYouTubeを見るなどし、アクセントを研究します。

子供が小さかった時は家事の負担も大きく、遊ぶ暇がないどころでなく、ゆっくりご飯を食べている時間がないこともしょっちゅう。出張の時などは、移動しながら予習、空港のラウンジで食事をしながら予習、その上、知らない土地で目的地を探さないといけないなど、心の余裕がまったく持てなかったり。

現在は、新型コロナの影響で少し仕事のペースが落ちついていますが、以前は、鏡に映るげっそりした自分の姿を見て驚くような生活でしたね。クライアントさんから「いつも走っていますね」って言われたりしていました(笑)

あとは、通訳は人との相性が必要になる仕事ですが、フリーランスの場合、いつも違った方とお仕事することになるため、どんな方にも同じように進んで挨拶をするなど、積極的にコミュニケーションを図っています。また、ハプニングが起きた時でも慌てた顔は見せず、常に笑顔でいるよう心がけています。

 



 

感謝の言葉と、非日常的な体験が糧

Q:大変な仕事をどうやって乗り越えているのですか?

大変なことの多い仕事ではありますが、クライアントさんからいただく「助かりました」などの感謝の言葉をやりがいに仕事を続けています。

あと、1つの企業で働いていたのではできない経験ができたり、普通では会えないような方とお会いできるというのも大きいですね。映画監督や俳優さんなどにお会いする機会もありましたし、政治家の会議に入って、こういうことをやってるんだ、と思ったりしたことなども。

個人的に一番楽しく、印象に残っているのは、シンガポールで、高級ブランドなどの外装とインテリアを一手に引き受けている会社への視察に同行した時です。

こういう風に作られているんだ、というのを見るのが興味深く、よほど嬉しそうだったのでしょう、クライアントさんから「今日は通訳さんが一番楽しそうでしたね」と笑われてしまいました(笑)

 

 

ー お話を伺っていてもずっと笑顔を絶やさず、とにかくポジティブな印象の余田さん。しかし、その裏には、責任感を持って通訳の仕事をこなすため、スレンダーなお体からは想像できないくらいたくさんの努力をされているのですね。

余田さんのインタビューから、通訳の仕事の苦労について少しでもご理解いただければ、他の通訳の方々も嬉しいのではないでしょうか。

 

「英語で仕事」「英語学習」などをテーマに書かれたブログが多数読めるランキングサイトです。

にほんブログ村 英語ブログへ

 



【 通訳ってどんな人? Vol. 1 】シンガポール在住 余田愛さん 

You May Also Like